誇る
TOUというブランドを始めた理由の一つに、「失われつつある日本の魅力的な文化」に対して、世の中の意識を少しでも向ける事ができないか、という思いがありました。
無いものを欲する感情。憧れという感情の側面の一つには、自身になく他者が持っているものを求める感情、という部分があると思います。その感情が大きなエネルギーを生み出し、自身を、また世界を動かす原動力になり、色々なものが変わっていく。憧れていたものを一つ手にすると、きっとまた次の憧れが生まれ、どこか際限のない流れに。私は、憧れという感情のすべてを否定したい訳ではありませんが、自身にはなく他者にはあるものを、憧れの名のもとにひたすら継ぎ足していった先には何があるのかを考える事があります。
もしかしたら、そこは皆同じ画一的な世界か、或いは自身の本来の在り方を見失った心の状態か。憧れの語源は古語の「あくがれ」。その言葉の意味は、「本来いる場所を離れてさまよい歩く事」という意味が含まれているそう。日本人が脈々と受け継いできた誇るべき伝統や文化や精神性。色々なものが後から足されすぎて見えにくくなってしまっているのかもしれませんが、それらは私たちが意識していないだけで実際には生活の至る所に潜んでいます。私はその伝統や文化に対して改めて深く考えていきたい。
「憧れ」という感情の名のもとに無いものを足すのではなく、受け継がれてきた既にあるものに「誇り」を持ち、それを磨いて次の世代に繋いでいけるように。
2025年3月26日